2025年12月1日月曜日

【告発】変圧器トップランナー制度、LCAも安全性も供給リスクも「未検証」だった ― 開示文書が暴いた資源エネルギー庁の制度設計の空洞

皆さん、こんにちは。

今回は、日本の電力インフラと産業基盤の根幹を揺るがしかねない、極めて深刻な行政の怠慢について書きます。

国が推進している
資源エネルギー庁の「変圧器トップランナー制度」

省エネの名の下に全国の変圧器仕様を強制的に切り替え、
いま現実には

  • トランス価格の異常高騰

  • 供給停止

  • 新設工場・設備の受電不能

という静かな国家級インフラ障害を引き起こしつつあります。

そこで私は、この制度の科学的・工学的な根拠が本当に検討されているのかを確認するため、行政文書の開示請求を行いました。

そして帰ってきたのが、今回の 開示・不開示決定通知書 です。

――結論から言います。

この制度は、「国家経済に直撃する規模の政策であるにもかかわらず、最も重要な技術的・環境的・供給的リスクを、行政自身が“一切検討していなかった”か、あるいは“記録を意図的に残していなかった”ことが公式文書で確定しました。

これは無能では済みません。
欺瞞か、職務放棄か、そのどちらかです。


1. 「手続きは完璧です!」──資源エネルギー庁が誇らしげに出してきた“形式資料”

まず、資源エネルギー庁は、開示請求に対して

34件の文書を「開示決定」

しました。

一覧を見ると、確かに**“書類の体裁”だけは完璧**です。

  • ワーキンググループ(WG)の議事次第・議事録

  • 「改善率試算」「原油換算効果」などの参考値

  • パブリックコメントと、それに対する「考え方」

  • 制度説明スライドや目標基準案

――要するに、

「会議はやりました」「資料は並べました」「手続きは踏みました」

という行政の自己満足セットは、すべて揃っていました。

しかし、ここからが本題です。


2. 「え? それ一番大事なところでは?」──衝撃の“不存在”

今回、私は次のような “制度の正当性を左右する最重要資料” の開示を求めました。

  • ライフサイクルCO₂(LCA)評価

  • 材料使用量(鉄・銅・アモルファス鋼など)の増減試算

  • 重量増加による施工・落下・耐震リスク評価

  • 旧製品製造中止による供給・施工リスク評価

  • 製造・輸送・据付まで含めた実質的CO₂収支

これに対する 資源エネルギー庁の公式回答は、以下の一文です。

「作成も取得もしておらず、保有していないため」

――つまり、

✅ CO₂は減るのか → 検証していない
✅ 重量が増えて危険にならないか → 検証していない
✅ 供給が止まらないか → 検証していない
✅ 材料増で資源・価格が破綻しないか → 検証していない

ということを、国自身が公式に認めたことになります。

これはもう、無邪気などという生易しい言葉で済む話ではありません。

国家インフラ政策として、やってはいけない「検討ゼロ運用」が明文化された瞬間です。


3. もはや「省エネ政策」ではなく「国家規模の実験」

特に致命的なのが、LCA(ライフサイクルCO₂)評価の完全欠如です。

高効率化のために:

  • 鉄が増える

  • 銅が増える

  • アモルファス鋼板が増える

  • トランスは重くなり、巨大化する

これらはすべて

  • 製造時CO₂

  • 輸送時CO₂

  • 設置時CO₂

確実に押し上げます。

にもかかわらず、資源エネルギー庁は

「運用時削減」と「製造時増加」を比較検証すらしていない

状態で制度を強行した。

これはもはや

「省エネ政策」ではなく、「エネルギーと資源を賭けた無計測の社会実験」

です。


4. 事故が起きたとき、誰が責任を取るのか

新型トランスは確実に

  • 重くなり

  • 大型化し

  • 施工難度が上がり

  • クレーン・基礎・耐震要求が厳しくなり

  • 落下事故・感電事故・据付事故リスクが増大します

しかし今回の通知書では、

✅ 重量増加リスク評価 → 不存在
✅ 施工安全性評価 → 不存在
✅ 既存設備での設置可否検証 → 不存在

公式に断言されています

つまり、誰も安全側の検証をしていない。

事故が起きたときに、

  • メーカーの責任か

  • 設計者の責任か

  • 施工業者の責任か

  • 発注者の責任か

と責任のなすりつけ合いになる未来が、制度設計の段階ですでに確定しているわけです。


5. 「制度上は製造中止を求めていない」という最悪の詭弁

通知書の中には、次の逃げ口上も記されています。

「トップランナー制度は、旧型トランスの製造中止を求めるものではない」

しかし現実はどうか。

  • 旧製品は次々と製造終了

  • 新製品は納期半年以上

  • 現場は完全に供給崩壊

これは

「制度上やっていないと言い張りながら、結果として完全にやらかしている」

という、行政の中でも最悪レベルの “結果責任放棄” です。


6. 結論:これは「無邪気」ではない、「国家級の怠慢」だ

ここまでの行政文書が公式に認めた事実は、極めて単純です。

✅ 手続きは踏んだ
✅ 書類は揃えた
❌ 科学的検証はしていない
❌ 安全性評価はしていない
❌ 供給リスクは想定していない
❌ CO₂収支すら比較していない

これを総合すると、

資源エネルギー庁は、「政策の形式」だけを整え、「政策の中身」を空洞化させたまま、国家経済を実験台に載せた

という結論以外に、どう解釈しても到達しません。


まとめ:これは「素朴」ではない、「許されない」

よく「善意の失策」「素朴な省エネ行政」といった言葉で行政を擁護する人がいます。

しかし今回は違います。

  • 経済への影響が明白

  • 安全リスクが明白

  • 資源・材料問題が明白

  • 国際競争力への打撃が明白

それでも検証を意図的に行わず,
「書類だけ整えて突っ走った」。

これはもはや

無邪気ではありません。
国家インフラ政策として“許されないレベルの怠慢”です。

私は今後も
この制度が どのような犠牲を日本社会に強いていくのか を、
行政文書と実務現場の両方から、徹底的に記録・公開していきます。