2020年6月15日月曜日

なぜ、パネル洗浄を積極的にお勧めしないのか?

実は、弊社では太陽光パネルの洗浄は積極的にはお勧めしておりません。屋根などは危険かつ高コストなので当然なのですが、野立でもお勧めはしておりません。

もちろん、太陽光パネルが太陽光を受光して発電している以上、汚れていない方が発電量はアップします。しかし、実際に洗浄を行うと費用がかかります。売電は営利事業なので、洗浄コストが洗浄したことによって得られる利益の増分を下回ることが条件となります。

実際の太陽光パネルは、チリやホコリ、鳥の糞、木の葉などで汚れる一方、雨や雪、風などで自然に洗浄されます。どんなに綺麗にしても、その後に土埃が俟ったり、鳥が糞をしたりするとすぐに元に戻ってしまいますし、汚れてしまっても雨が降ると自然にある程度綺麗になってしまいます。特に、冬場に雪がふるとパネルは非常に綺麗な状態になります。

洗浄をしてある程度の効果を出す為には、高頻度で洗浄を行い、自然に汚れて洗浄されるレベルよりも清浄な状態を維持しなければならないことになります。これを考えただけでも、パネル洗浄を行う気は半分くらいになってしまいます。

それでも、「取れにくい汚れが蓄積すると悪いのではないか?」という様にも思われるでしょう。確かに、汚れが蓄積して年毎に発電量が徐々に落ちていくのであれば、定期的に洗浄した方が良さそうです。これに関しては、弊社なりの答えを持っております。それは「年間発電量が明らかに落ちる様であれば洗浄すれば良い。」というものです。これまでのところ、関東東北を中心とする弊社が監視している発電所に関しては、明確な劣化傾向は認められていないというのが現状です。以下に、茨城県某所の農村部で畑に囲まれた立地の発電所のデータを示します。この現場は過去に一度もパネル洗浄は行っておりません。

茨城県某所(農村部)の発電データ:月毎の発電量に天候のバラつき以上の大きな変動があるとは認められない。


また、別な問題として「発電量を大きく下げる汚れとはどんなものか?」という問題があります。発電量に大きな影響を与えるのは、汚れとしては鳥の糞や木の葉などセルを局所的に遮光するものです。これらは個々のパネルの発電量を減らすだけでなく、抵抗増と他のストリングとのミスマッチにより、ストリング及びパワコン(MPPT)全体の出力を大幅に下げてしまう可能性があります。それに対して塵や埃などは全体的に覆いかぶさるので、極端な発電量の減少には繋がりにくいです。

つまり、効果が出やすい作業と出にくい作業を分類すると以下のようになってしまいます。つまり、所内全域のパネル洗浄は徒労に終わる可能性が非常に高く、同様以上の効果は、葉っぱや鳥の糞を取り除く作業で得られるということになります。

効果が出やすい作業
  • 木の葉などパネルに乗っているものを落とす(無料)
  • 鳥の糞のみを取り除く(無料)
  • 草や蔓などを取り除く(有料:安価)
効果が出にくい作業
  • 全てのパネルを綺麗に洗う(有料:比較的高価)


特に、パネル毎またはストリング毎の発電量を監視している場合には、どこが出力の制限要因なのかは明確なので、殊更、全部のパネルを洗浄しようとは思わないということになります。
パネル毎の監視をしているので、建物や草(竹)などの影響が明確にわかる。(草刈りのタイミングがわかる)